島倉 裕樹 准教授 

    島倉裕樹氏は頂点作用素代数を 中心とした代数的組合せ論や有限群論との繋がり を研究しています。頂点作用素代数は二次元共形場理論を起源とする代数系であ り、物理学者も興味を持っている対象です。散在型有限単純群の中で位数が最大 であるモンスター単純群と性質の良い保型関数との対応を意味するムーンシャイ ン予想が頂点作用素代数を用いて解決されたことからも、様々な数学の分野への 応用があることがわかります。
    頂点作用素代数の研究開始当初から考えられている問題の一つに「中心電荷 24 の 正則頂点作用素代数の分類」があります。これは格子理論における有名な結果の 一つである「階数 24 のユニモジュラ偶格子の分類」の頂点作用素代数における 類似と考えられています。中心電荷 24 の正則頂点作用素代数の重さ 1 の空間に リー代数構造が入りますが、その 71 通りの可能性のリストが1993年に数理物理 学者によって与えられています。そこで、次の (1), (2) を解決し、分類する方 向での研究が進んでいます。
(1) 71 個の各リー代数に対して、それを重さ 1 の空間に持つ中心電荷 24 の正 則頂点作用素代数の構成
(2) 各リー代数に対して、それを重さ 1 の空間にもつ頂点作用素代数構想が 一意的であることの証明
    島倉氏はこの分類問題に関して Lam 氏(中央研究院)と共同研究を行っていま す。特に軌道体構成法と呼ばれる方法を用いて (1)の大部分を解決していま す。また、枠付と呼ばれる仮定の下では (1), (2)が解決され、丁度 56 個が存 在することが分かっています。今後は組合せ論的手法を用いて (1), (2)の完全 な解決を目指していきます。