松村慎一氏は超越的な手法を用いて高次元の代数多様体やケーラー多様体を研究
しています。
代数多様体とは(局所的に)多項式の零点で定義される図形であり、
代数幾何学と呼ばれる分野で活発に研究されています。
一方で、複素多様体とみなすことで複素解析学や微分幾何学の立場からの研究も
可能となります。
この種の研究は複素幾何学と呼ばれる分野に属しており、
(代数的とは限らない)より広い幾何学へのアプローチを可能にします。
代数学と解析学が幾何学を結節点として調和しており魅力的な研究分野だと言え
ます。
具体的には、松村慎一氏は双有理幾何学や極小モデル理論に興味を持っており、
そこで自然に現れる小平型のコホモロジー消滅定理の一般化を研究しています。
コホモロジーは適切な微分形式の空間と閉作用素を準備することで、
多様体上の微分方程式(dbar方程式)で記述できます。
この微分方程式を、直線束や曲率などの正値性に注目して、
L^2-理論や調和積分論などの道具で調べています。
この研究のより幾何学的な応用を目指し、
(多重)標準束の正則切断の部分多様体から全空間への延長問題も研究しています。