前川 泰則 准教授

    前川泰則氏は流体力学と関連の深い偏微分方程式について研究を行っています。特に、粘性流体の速度場を記述する Navier-Stokes方程式や渦度場を記述する渦度方程式が中心的な研究対象です。
    Navier-Stokes方程式は19世紀の中頃に提唱された非線形偏微分方程式系であり、流体力学における基礎方程式として 知られています。特に、「3次元空間における初期値問題に対して初期値等の付随データを任意に与えたとき、 滑らかな解が時間大域的に唯一つ存在するか」という問題は、アメリカのClay数学研究所によって提唱された 7つのミレニアム未解決問題の一つとして有名です。Navier-Stokes方程式は解析の難しい偏微分方程式ですが、 その理由に非線形性と非局所性が挙げられます。ここでの非局所性とは、「解のある1点での挙動が他の全ての点に おける解の振る舞いに影響を与える」というものです。このように強い非局所性・非線形性は方程式を数学的に 解析する上で大きな障害となる一方、乱流のように複雑な流体運動の背後にある数理構造の豊かさを 反映していると言うこともできます。
    前川氏は、乱流中において比較的長時間持続する微細な渦管構造や境界付近における境界層の形成と剥離など、 高Reynolds数の流体に現れる特徴的な空間局所構造に興味を持っています。高Reynolds数の流体運動は一般に 極めて不安定なものと思われるため、その中で安定的に持続する構造が存在することは大変興味深いことです。 このような特徴的な構造の安定性について、調和解析や関数解析の手法を用いて研究しています。