代数幾何学では,
そこから派生する圏を研究することがしばしば重要になり活発に研究されています。
代数多様体上の連接層やD加群による三角圏や,
特異点から派生する圏,エタール被覆の圏, 混合モチーフの圏などが重要な例です。
一方,ホモトピー論や表現論,シンプレクティック幾何学, 数理物理などからも圏が現れます。
近年急速に発展した高次圏,ホモトピー論的な代数幾何(いわゆる導来代数幾何,
derived algebraic geometry)などをバックグラウンドにしつつ,
岩成勇氏は,圏に現れる普遍的な構造や性質を捉える事で複数の分野を含む有機的な拡張をすること,
古典的な問題にも応用することを1つの大きな目標にして研究しています。
ここで単に圏(圏といったら高次圏ということにします)といっても,
その現れ方により考える付加構造が加わります。
対称モノイダル構造付きの圏に対して, 高次の淡中双対理論を研究し,
それは古典的な淡中双対理論の拡張,有理ホモトピー論の拡張,
モチーフ的なガロア理論への応用を与えることがわかってきました。
対称モノイダル構造を他の構造にかえて考える横のつながりにも注視しています。
例えば対称モノイダル構造のかわりにbraidedモノイダル構造を考えると,
量子群(の表現の圏)や結び目に関係する圏が現れます。
モノイダル構造を付加しない圏, 即ち安定高次圏に対しては,モジュライ理論,
退化の理論,ホッジ理論等を実現させることを(夢物語かもしれないものの)目標としています。
圏を橋渡しとしての様々なアイデアの相互作用や融合を研究することはこれから益々重要になる鍵といっていいでしょう。
興味をもったことは分野にとらわれずとり込んでいく姿勢を大切にしたいと思っています。