<概要>Leray's inequality in 3D domains
本講演の内容は柳澤卓氏(奈良女子大・理)との共同研究に基づいている.

境界が有限個の滑らかな連結成分からなる3次元空間内の有界領域において, 非斉次境界値を与えた場合の定常ナビエ・ストークス方程式の可解性について考 察する.非圧縮性条件から,与えられた境界上の関数は, 各連結成分の”流量の総和”が零であることが必要条件であることが従う. この必要条件下での同方程式の定常問題の可解性は,長年の未解決問題である. これまでのところ,境界上の関数の各連結成分における流量が零という制限され た条件においては可解性が得られている.

本講演では、与えられた境界上の非斉次関数に付随して決まる, 低階の摂動項をもつ線形ストークス作用素について考察する. 実際,非線形であるナビエ・ストークス方程式の可解性は,摂動ストークス作用 素の正値性と密接な関係にあるが,その証明に重要な役割を演じるLerayの不等 式は,実は極く限られた多重連結領域についてのみ成立することを紹介する.