<概要>Move-to-front規則とオンラインランキング
 2008年度に東北大学数学教室の修士課程を修了した竹島佑介君の修士論文 「ランキングプロセスに基づくオンラインランキングの分析」 で用いられた多粒子確率模型は,40年以上前に文献に登場し, 約20年前からは move-to-front rules という名前で, 特に計算機のキャッシュメモリー上のデータ配置の数理モデルとして, 活発に研究されてきた. しかし,竹島君の修士論文で用いられた多粒子極限に関する結果は, 半世紀近く気づかれなかったようである. この歴史と我々の結果について,我々の視点から概観する.
 我々の結果が生き残ったことについて, 相互作用する多粒子確率過程の研究において, 『位置変数との結合経験分布の多粒子極限が偏微分方程式の解で記述される』 という描像と, オンラインランキングという20世紀終わり以降の技術の進歩の重要性を指摘したい.