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現代の戦争の姿

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2001年9月21日 作成公開


目次


米国同時テロ後の世界


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国際テロに対する軍事力の無効性

元防衛研究所所員の加藤朗 (現在桜美林大学国際学部教授) の著書『現代戦争論――ポストモダンの紛争LIC』 (中公新書 1143、 1993.8) には次のように書いてある:

軍事力の有効性

 「反駁の余地なく」国家の関与が証明され、政治的、法的、軍事的にも軍事力行使に正当性が得られたとして、最後に、では軍事力そのものが国際テロを解決する手段として有効かという問題が残る。しかしリビア爆撃の結果をみる限り、最後の切り札である軍事力の行使もテロにはあまり効果はない。ではなぜ軍事力が国際テロにそれほど有効ではないのか。結論を言えば、リビア爆撃の例でもわかるように、国際テロに軍事力を行使しても、第一に破壊、第二に抑止の点で効果はほとんどないからである。

 ……

 こうして軍事力は先制・予防攻撃にもまた抑止にも効果はなく、結局リビア爆撃はテロ研究の第一人者であるブライアン・ジェンキンスが警告したようにイスラエルが陥った報復の連鎖に陥り、八八年一二月のパンナム機撃墜事件を引き起こしてしまった

(加藤朗『現代戦争論』 144-145, 147-148頁より、強調は引用者による)


戦略爆撃の疑わしい効果

元陸将補の松村劭の著書『新・戦争学』 (文春新書 117、 2000.8) には次のように書いてある:

戦略爆撃の疑わしい効果

 ベトナム戦争末期、相手国の産業を破壊して軍事力の供給を低下させようとしたり、民衆の生活基盤を破壊して国民の戦意を弱めようとする戦略爆撃は、期待するほどの効果はないと、一部の専門家は指摘し始めた。それはベトナム戦争に効果がなかっただけではなく、第二次世界大戦の戦史研究を通して得られた結論でもあった。

 しかし、冷戦が終わり、軍事力では米国一極の支配体制になると、米国は「いかに損害を少なくするか?」を軍隊の最大課題としたため、再び戦略的火力攻撃 (爆撃、ミサイル攻撃や砲撃) が息を吹き返した。

 その結果、湾岸戦争でも、ボスニア・ヘルツェゴビナでも、またコソボにおいても、長期にわたる大規模な火力攻撃が行なわれた。もちろん、最終的には陸軍 (PKOを含む) が乗り込んで事態を制している。

 ……第一次世界大戦のあと、戦略爆撃によって相手国の産業力を破壊し、市民に恐怖を与えて士気を打撃することが勝利の近道であるという理論が横行した。その亡霊は世紀末まで世界中を徘徊したが、これは歴史の教訓にまったく逆行した理論であった。戦争によって相手国民衆に恐怖と怨念を与えれば、勝敗の如何にかかわらず、戦後の国際政局に緊張と不安定を残すことは戦史の教訓である。

 ……

空爆が残した強い「怨念」

 ボスニア・ヘルツェゴビナやコソボで、多国籍軍は空爆によって強い「怨念」と西欧指導者の「行動規範に対する疑念」を残した。……

 ボスニアやコソボに陸上部隊を当初から投入すれば、問題の解決はもっと早く、破壊も少なかったはずである。ところが多国籍軍は自国陸軍兵士の損害を恐れた。火力だけでセルビア軍を撃破しようとしたのである。その答えは猛烈な破壊であった。

(加藤朗『新・戦争学』185-188頁より、強調は引用者による)


最新鋭米軍に対する対抗戦略

元防衛研究所主任研究員の中村好寿の著書『軍事革命(RMA)――〈情報〉が戦争を変える』 (中公新書 1601、 2001.8) には最新鋭の米軍 (RMA軍) とそれに敵対する装備に劣る軍隊 (非対称軍) の戦闘に関して次のように書いてある:

非対称戦の特色

 朝鮮戦争やインドシナ戦争、さらにはコソボ戦争の教訓から、将来、米国のRMA軍に敵対しようとする軍隊は、自らの軍隊の長所を確認したうえで、技術大国の弱みを見抜くことになるだろう。彼らの長所は、第一に、戦争を長期にわたって戦い抜くという強靭な意志であり、第二に、兵力数の圧倒的優位であり、第三に、土着性の強い戦法である。一方、米国のRMA軍が抱えている弱点は、第一に、戦闘による死傷者の発生や民間施設の破壊に対する極度の嫌悪感であり、第二に、国内および国際世論に対する敏感さであり、第三に、長期戦を戦う用意も意志もないことである。

 したがって、米国のRMA軍に挑戦する地域大国の軍隊は、強靭な戦闘意志を有した大規模な地上軍をもって長期「消耗戦」を生起させ、米国兵士に出血を強いる戦いを展開するだろう。戦争の目標は、勝利ではなく、不敗である。……

 ……

 したがって、米軍に残された方法は二つしかない。一つは、指揮・統制機能の無能化をあきらめて、一つの「拠点」防衛陣地に大量の火力を集中して、逐次、「拠点」を潰していく方法、すなわち、工業化時代の「消耗戦」に帰る方法である。

 ……しかし、火力による麻痺効果は長続きするものではない。火力による打撃が終われば地下壕から這い出し、米軍の火力打撃に続く歩兵や戦車による攻撃に対処することができる。

 麻痺させることを狙って、長期間「もぐらたたきゲーム」のように何度も火力打撃を繰り返していると、強靭な戦闘意志を有する「非対称軍」は火力打撃に慣れてきて、機動部隊の攻撃を効果的に撃退できるようになるにちがいない。朝鮮戦争、インドシナ戦争、そしてコソボ戦争はまさにそうであった。

 一方、集中打撃を受けていない「拠点」防衛陣地の「非対称軍」は、好機到来とばかりに、「拠点」防衛陣地を出て、攻撃行動に出るだろう。米軍に出血を強いるとともに、集中攻撃を受けている部隊に対する米軍の圧力を減少させるためである。

(中村好寿『軍事革命(RMA)』154-159頁より、強調は引用者による)

中村は米軍に残されたもう一つの方法として「同時打撃」による敵の「封じ込め」を挙げているが、国際テロリスト集団に対してそれは可能だろうか?